総監修:
社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 (脳神経内科部長・頭痛センター長)/ 富永クリニック 院長
竹島 多賀夫先生

性別や年齢と頭痛の関係

監修:
富士通クリニック 頭痛外来
五十嵐 久佳 先生

2021年2月作成

片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛は、性別や年齢によって起こりやすい頭痛のタイプが異なります。「頭が痛い」と聞くのは女性の方が多いように感じませんか?性別と頭痛にはどのような関係があるのか、ライフステージと頭痛の関係を解説します。

性別や年齢によって起こりやすい頭痛

一次性頭痛の性別や年齢による違い

片頭痛

日本人全体の 片頭痛 の有病率(病気をもっている方の割合)は8.4%といわれていますが、男女別にみると男性は3.6%、女性は12.9%と明らかに女性に起こりやすい病気です。1) 10歳以下の子どもでは、有病率に男女差はないといわれていますが、女性が初潮を迎える12歳前後から女性の割合が高くなっていきます。
海外の報告では有病率は男女ともに30歳前後まで上昇を続け、女性では24.4%、男性では7.4%をピークにして、その後は加齢とともに下がっていきます。2) また、女性は閉経を迎えると約3分の2の方が軽快し、60代になると10%未満まで有病率が下がります。1),2)
片頭痛が女性に多いのには、女性ホルモン(特にエストロゲン)が大きく関与していると考えられています。実際に生理(月経)前や生理中に頭痛症状があらわれたりするので、月経と頭痛発作の間に何らかの関連があると感じている女性も多くいらっしゃいます。
片頭痛と女性との関係

また、痛みの強さは男女差がないといわれていますが、女性の方が頭痛発作の頻度が高く、1回あたりの頭痛の持続時間も長い傾向があります。つまり、片頭痛が生活に悪い影響を与えるのは女性の方が多く、生活の質(Quality Of Life:QOL)が低下しやすいといえます。特に生理に関連して起こる頭痛は、それ以外の時期に起こる頭痛と比べて吐き気などの症状が強く、薬も効きにくい傾向があります。薬が効かないから、頭が痛くなりそうだからと頭痛薬を飲み続けてしまうと 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛) を起こす可能性があるため、日常生活への支障が大きく、辛い場合は早めに医療機関を受診してください。

緊張型頭痛

日本人全体の 緊張型頭痛 の有病率は約20%といわれており、数ある頭痛の病気のなかで最も有病率が高い病気です。片頭痛ほどではないものの女性の方が起きやすい傾向がありますが、その理由はまだ解明されていません。 10代と60代では有病率の男女差はほとんどみられないものの、20〜50代では、女性の方が1.5倍くらい高くなるといわれています。3)
有病率は男女ともに10代以降上昇し、20〜30代にピークを迎えます。その後は、加齢とともに有病率は下がっていきますが、片頭痛と異なり女性は閉経後も大きな減少はみられません。3),4)

群発頭痛

群発頭痛 の有病率は0.056〜0.4%といわれており、頭痛そのものが病気である一次性頭痛のなかで、いちばん有病率が低い病気です。男性の方が女性の3〜7倍多い頭痛ですが、最近は女性にも増えてきたといわれています。
有病率は10代後半から上昇し、20〜40代でピークを迎えた後は加齢とともに下がっていきます。5)

各ライフステージにおける頭痛の特徴

    子どもの頭痛 」(監修:筑波学園病院 小児科 藤田光江先生)でより詳しく解説しています。ここではポイントを抜粋して解説します。

    子どもの頭痛は決して珍しいものではなく、3歳ごろから頭痛を訴える子どももいます。「頭が痛い」とうまく伝えることができる子どももいれば、「頭が重い」と表現したり、ただじっとしている子どももいて、頭痛の訴え方はさまざまです。

    乳児期

    子どもの頭痛の多くは片頭痛といわれており、他の病気によって頭痛が起こる 二次性頭痛 は稀だと考えられています。ただし、「日を追うごとにだんだん頭痛の強さが増し、頻度も増えている」、頭痛以外に「大笑いや大泣きをしたときに身体から力が抜ける」や「立ちくらみが多い」などの症状を伴う場合は、二次性頭痛の可能性があるためかかりつけ医に相談してください。
    また、子どもが思春期を迎える頃になると、女性の生理に関連する片頭痛や、ストレスやこころの不調が大きく関係し、学校の長期欠席にも繋がるような頭痛「慢性連日性頭痛」などが増えてきます。

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    就職や転職、結婚など、大きな環境変化を経験される方も多いと思いますが、環境の変化はときに頭痛を悪化させます。大切な約束、仕事や育児など頭が痛くてもなかなか自由に休むことができない状況もあります。そのため、頭痛薬への依存が増し 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛) を起こしてしまうことがあるため注意が必要です。月に10日以上、3ヶ月以上にわたり頭痛薬を飲んでいる場合は薬物乱用頭痛を起こしている可能性があるため、かかりつけの先生や頭痛専門の先生に相談してください。

    青年期

    また、最近では共働き世帯の数が年々増加していますが、家事や育児の負担割合はいまだに女性の方が圧倒的に高い状況にあります。2016年に行われた内閣府の調査では、未就学児をもつ共働き世帯における家事・育児・介護にかける1週間の平均時間は、女性が253分に対して男性は84分でした。5) 特に子育ての期間は女性に大きなストレスがかかり、慢性的な頭痛の引き金になることがあるため注意が必要です。

    妊娠中や授乳中に頭痛薬を飲んでも大丈夫?

    年齢にもよりますが、薬を服用していない方でも、およそ1/8(12.5%)の頻度で自然流産が起こり 、1/30(3%)の頻度で胎児の身体に異常(先天異常)が起こるというデータがあります。そして、頭痛薬に限らず、奇形を引き起こす可能性がある(催奇形性がある)といわれる薬の多くは、胎児の身体に先天異常が起こる確率を1〜3%上昇させるといわれています。6)このようなことを知ったうえで、セルフケアをしながら妊娠のステージごとに使用できる頭痛薬を考えていくことが大切です。7)

    妊娠中や授乳中

    • 妊娠0〜3週6日頃:「all or none(全か無か)」の時期といわれています。つまり、何か妊娠にとって有害となりうる刺激を母体が受けた場合、実際に有害であったならばそもそも妊娠できないため(または流産するため)、正常に妊娠できたのであれば胎児への有害な影響は無かったとする考え方です。
    • 妊娠4〜15週末:薬によって先天異常が発生する可能性があるため、使用する薬には注意が必要です。
    • 妊娠16週〜分娩まで:薬による先天異常が発生する可能性は低くなるものの、薬の成分がお母さんの胎盤を通して胎児まで伝わり悪影響を与えてしまうことがあるため(これを胎児毒性といいます)、この時期も使用する薬には注意が必要です。特に鎮痛薬のなかには、この時期に絶対に使用してはいけない薬もあるため、強い頭痛がある場合、できるだけ早めに産婦人科や頭痛の専門医に相談しましょう。
    • 授乳期:お母さんが使用した薬の成分が母乳中に移行することがありますが、その移行量は薬ごとに異なり、治療と母乳育児を両立できる薬もあります。詳しくは、国立成育医療研究センターホームページの「 授乳中にお薬を使うにあたって知っておいていただきたいこと 」をご覧いただき、主治医にご相談ください。

    周囲の方々に頭痛の辛さを理解してもらうには?

    頭痛のせいで予定を急にキャンセルしたり、学校や会社を休んだ経験がある方も多いと思います。頭痛は発作時でも見ためが変わらず頭痛が起こっていると分からないため、その辛さを周囲の方に理解してもらうことが難しい病気です。周囲の方から「ドタキャンが多い」「さぼっている」などの誤解を受けてしまわないよう、勇気を出して自分から周囲の方に辛さを伝えるようにしてみましょう。

    人に伝えるための第一歩として、まずは自分の頭痛がいつどのように起こるか知っておく必要があります。頭痛が起きたときの状況を 頭痛ダイアリー などに記録して、その性質をよく観察しましょう。

    人に頭痛の辛さを伝える際は、具体的に症状を伝えると理解してもらいやすくなることがあります。以下に一例をあげます。

    • 一歩も動けないくらい頭が痛い
    • 気持ちが悪くて吐き気がひどい
    • 食欲がわかず何も食べられない
    • 光と音が辛いので静かなところで寝ていたい など

    なお、これらは二日酔いのときの状態ととてもよく似ていますので、お酒を飲まれる方に対しては、「片頭痛はひどい二日酔いと同じような辛さ、それが突然起こる」と表現することでその辛さを理解してもらえることがあります。

    また、もし学校や職場に対しての説明が必要な場合は、一度かかりつけ医に診断書の作成について相談してみるのもよいでしょう。

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    日本人女性の平均閉経年齢は50歳ごろといわれており、閉経の前後5年間を更年期といいます。更年期はホルモンバランスに変化が起こるため、片頭痛の頻度や頭痛の重さが悪化してしまう方もいますが、多くの方は閉経により改善します。

    壮年期

    また、この時期には子どもの受験や自立、自身や配偶者の定年退職などの環境変化によるストレスで、新たに緊張型頭痛が起こる方もいます。片頭痛の改善と入れ替わるように緊張型頭痛が起こった場合、別のタイプの頭痛だと思わずにこれまでの頭痛が続いていると思ってしまいます。いつも飲んでいた片頭痛の薬が効かなくなったと思い込んで、連日のように薬を飲んでしまい薬物乱用頭痛を起こす場合もありますので、薬が効かなくなったと感じたら医師に相談しましょう。

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    老年期になって初めて片頭痛や緊張型頭痛を経験される方も珍しくはありませんが、この時期に初めて頭痛が起こった場合は、脳出血などの命に関わるような 注意すべき頭痛 である可能性に注意が必要です。以下に思いあたる症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

    • 普段とは異なる強い頭痛
    • 頭痛が起きた瞬間をはっきり思い出せるような突然起こった頭痛
    • 数週間の間に、どんどん痛みが強くなる頭痛
    • 手足のしびれや麻痺、意識障害、物が二重に見える、ろれつが回らないといった症状を伴う頭痛
    • 発熱を伴う頭痛

    老年期

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    <参考>
    1. 1)Sakai F, Igarashi H : Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997;17:15-22.
    2. 2)Lipton RB, et al : Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy. Neurology 2007; 68:343-349.
    3. 3)五十嵐 久佳:特集 慢性頭痛:診断と治療の進歩 I.慢性頭痛 1.分類と疫学,日本内科学会雑誌 2001;90:567-573.
    4. 4)慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会:慢性頭痛の診療ガイドライン2013,医学書院,2013.
    5. 5)男女共同参画局:男女共同参画白書 令和2年版,内閣府,2020,p.9
    6. 6)Parper PS : Practical Genetic Counselling 5th ed., p11, 1998
    7. 7)林 昌洋,他:実践 妊娠と薬 第2版,じほう,2010