一人で悩まずに「治す」「防ぐ」頭痛体操のすすめ!
- 監修:
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埼玉精神神経センター埼玉国際頭痛センター長 坂井 文彦 先生
2022年11月改訂
頭痛は「怖くない」「防げる」病気
ひとくちに「頭痛」と言ってもさまざまなタイプがあります。MRI検査などの画像診断で判明する脳の病気と直結したもの(二次性頭痛と呼ばれるもの)ではなく、繰り返し起こって悩ませる慢性頭痛(一次性頭痛と呼ばれる)には、治せる・防げるものがあることはご存知でしょうか。
慢性頭痛の代表格が「片頭痛」「緊張型頭痛」です。
その痛み、苦しみは本人にしか分からず、他人に伝えづらく、理解されにくいものです。日常生活や仕事に支障をきたすほどつらくても、頭痛で休むとサボりだと見なされる風潮があるのも、悲しいかな、現実です。
薬に頼らずに「治したい」、せめて「防ぎたい」と考えるあなたに、簡単にできるセルフケアをご紹介します。
あなたの頭痛はどちらのタイプ?
まずはあなたが日頃悩まされている頭痛が 片頭痛 なのか 緊張型頭痛 なのか、見わける必要があります。
例えば「片頭痛」であれば「月に1~2回から週に1~2回程度の頻度で繰り返し起こる発作性の頭痛」であり、ズキンズキンと脈打つような痛みが頭の片側または両側に起こるのが特徴です。
一方、「緊張型頭痛」は一日中頭が重く、圧迫感があり、気分が晴れることがありません。たとえば、パソコン作業のようなうつむき加減の姿勢を長時間続けると、頭を支える首の筋肉が収縮し、触ると首の後ろにゴリゴリとした塊がわかります。首の筋肉にストレスや疲労がたまり、夕方から頭全体が重くなり、締め付けられるような頭痛を感じることからまさに「首こり頭痛」です。
片頭痛は動かすと悪化するのに対し、緊張型頭痛は散歩など適度に体を動かすことで症状が緩和されることがあります。同じ「頭痛」なのですが、片頭痛は血管が拡張することによって起こり、緊張型頭痛は血管や筋肉が収縮することによって起こるもの。すなわち、痛みが発生するメカニズムが正反対であるため、対処法を間違えると悪化する場合もあります。首や肩のこりを伴う片頭痛もあるため、見わけるのはとても難しいことです。そして、この2つの頭痛は混在することもよくあります。
そこで活用して欲しいのが、
頭痛ダイアリー
です。
頭痛の起こり方や痛みの強弱、痛みが続いた時間、飲んだ薬などを日記のように書き留めておくことで、正確な診断や治療計画につながります。痛みの様子と同時に、仕事の忙しさ、感じたストレス、天気や環境の変化、月経期間も書き加えておくことで、どんなときに痛みが起こりやすいかも知ることができます。
片頭痛の「誘因」を見つけて予防する
ストレスや環境の変化、生活習慣の乱れなど、頭痛を引き起こすきっかけ、すなわち「誘因」は人によって実にさまざまです。台風や雨による気圧や天候の変化、湿度、温度差、街の雑踏や騒音、光などが誘因となっている場合もあります。
緊張型頭痛であれば、精神的なストレスあるいは身体的なストレスによって筋肉が収縮したり、血行が悪くなったりして起こりますが、片頭痛は同じストレスでも、最中ではなくストレスから解放された時に起こることがほとんどです。
あなたの頭痛が引き起こされる「きっかけ」を見逃さないようにしましょう。誘因がわかれば、その誘因を避ける・コントロールすることも1つの予防策となるからです。
片頭痛の「記憶回路」をリセットして予防する
緊張型頭痛の場合、首の後ろにある筋肉がこり固まった部分があり、そこを押すとイタ気持ちよく感じるのですが、片頭痛の場合も押すと痛みを感じる「圧痛点(あっつうてん)」があることが分かってきました。緊張型頭痛の圧痛点よりももっと内側にあり、片頭痛に悩む人の脳の記憶回路に刻み込まれた、痛みの電気信号をキャッチする窓口です。
<参考>坂井文彦:「片頭痛」からの卒業, 講談社現代新書.
片頭痛が慢性化した結果、痛み信号を受け続け、蓄積するうちに、脳が記憶してしまったのだと考えられます。
記憶回路が出来上がってしまうと、頭痛がないときでも痛み信号が送り出されてしまいます。その結果、痛みの窓口である圧痛点は常に痛みに敏感となり、押すと痛みを感じるのです。
ここに新たな刺激を加え、脳に良い信号を送ることで片頭痛圧痛点を消滅させ、片頭痛を防ぐ。その発想で生まれたのが、片頭痛の予防に繋がる「頭痛体操」です。
頭痛体操は、自分で頭痛を対処する「セルフケア」の1つです。目的は3つあります。
- ①緊張型頭痛を緩和する
- ②片頭痛の早期発見に繋がる
- ③片頭痛を予防する
① 緊張型頭痛を緩和する
緊張型頭痛は筋肉の緊張(筋硬結)やこりによって起こりますので、ストレッチして血行を良くすることで緊張型頭痛を緩和します。
② 片頭痛の早期発見に繋がる
片頭痛は発作が起こっているときに動くとつらい特徴があります。片頭痛と緊張型頭痛が混在している人(慢性片頭痛に多い)が頭痛体操を行ったときに、頭痛が悪化すると今起こっているのは片頭痛だろうと気づくことができます。
③ 片頭痛を予防する
体操の刺激をストレッチ信号として圧痛点に送るので、片頭痛が起こってない時の体操は、片頭痛の予防になります。
ご自身の頭痛を知り、うまく付き合うことが頭痛の治療にもなります。
片頭痛予防には「コマ体操」!
自宅やオフィスなどで誰でも簡単にできる約2分間のストレッチで、片頭痛の慢性化を予防します。
コマ体操の方法
首の周りの筋肉は頭を支えたり、動かしたりします。この筋肉に疲労がたまり、硬くなることが片頭痛の原因の1つとなります。コマ体操は頭と首を支えている筋肉(インナーマッスル)と神経をストレッチし、その刺激をストレッチ信号として送ることで片頭痛を予防します。
正面を向いて、足を肩幅に開きます。頭は動かさず、両肩を大きくコマのようにまわします。頸椎(けいつい)を軸として肩を左右に90度まで回転させて戻し、リズミカルに最大2分間続けましょう。
椅子に座って行う場合も同じように、頭を正面に向けたまま左右の肩を交互に前に突き出すように回転させましょう。足は閉じても少し開いてもどちらでもOKです。
立って行うのがおすすめですが、仕事の合間など、椅子に座ったまま行っても大丈夫です。コツは「体の軸を意識する」「腕の力を抜く」「頭は動かさない」ことです。
笑顔で行うことも忘れずに。リラックスした状態で、テンポ良く体操を行うことで、ストレッチ信号がリズムに乗って脳へと送られます。脳の痛み回路に良いリズムが送られるので、脳が活性化されるのです。
普段動かさないインナーマッスルを動かすのは、想像以上に疲れますので、長く行うのは逆効果。 「1日2分」で十分です。
緊張型頭痛とは異なり、片頭痛は動くと余計につらくなるので、片頭痛の症状がある時は体操を行わないよう気をつけましょう。体操をし、頭痛がひどくなるようでしたらやめてください。
緊張型頭痛には「肩まわし体操」を追加しよう!
緊張型頭痛の方は、さらに「肩まわし体操(肩グルグル体操)」も追加してください。
肩と頭を支える肩僧帽筋(右図)の緊張をほぐし、血行を良くすることで、首にたまった疲労物質や、痛み物質を取り除きます。
こちらも方法は簡単です。
両ひじを曲げた位置から上着を脱ぐような動作で、肩を中心にして前から後ろへ大きくまわします。前から5回と後ろから5回を2セット、合計20回。コマ体操と合わせても1日3分で完了するストレッチ体操です。
肩まわし体操の方法
首や肩の筋肉の緊張やこりによって起こる緊張型頭痛を解消するための体操です。肩をまわすことで肩僧帽筋をストレッチして血行を良くし、首や肩のこりを緩和します。
正面を向いて、足を肩幅に開きます。両ひじを90度程度に曲げ、肩を中心にして、前から後ろへ「上着を脱ぐ」感じで大きく5回まわします。
先ほどとは反対に「リュックサックを背負う」感じで後ろから前へ、大きく5回まわします。
力を抜いて、前からと後ろからまわす体操を2セット行います。
肩まわし体操は、頭痛の最中に行えば痛みの緩和に、頭痛のないときに行えば予防になります。
腕ではなく、「肩をまわす」のがコツです。肩がゴリゴリと鳴り「気持ちいいな」と感じるようにまわしましょう。首の筋肉に負担をかけてしまう恐れがあるので、首をグルグルと回すことは厳禁です。
頭痛体操を取り入れて人生をラクに
いかがでしたか。「治らない」と諦めていた頭痛のつらさを緩和する頭痛体操。薬だけに頼らない簡単セルフケアで、一緒に「頭痛から卒業」を目指しましょう!
“頭痛体操” をより多くの方に知ってもらいたい!
頭痛でお悩みの方に、セルフケアとして頭痛体操を取り入れてもらいたく、頭痛体操ページにリンクする二次元コード付きの画像を作成しました。
学校や企業の掲示物、医療関係者の皆さまにおかれましては院内のパンフレットや患者さん指導用のツールなど用途に合わせてご利用ください。
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頭痛でお悩みの身近な方に、SNSを通じて、ぜひ頭痛体操をおすすめしてください!