総監修:
社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 (脳神経内科部長・頭痛センター長)/ 富永クリニック 院長
竹島 多賀夫先生

片頭痛に関連する症状「アロディニア」

監修:
東京歯科大学市川総合病院 神経内科 部長・教授
柴田 護 先生

2024年10月作成

アロディニアとは

アロディニアとは、通常は痛みを感じない触覚刺激に対しても痛みを感じてしまう感覚異常のことで、片頭痛患者さんの多くにみられる症状です。日本語では「異痛症」とも呼ばれています。例えば、シャツを着たときの衣擦れが、本来であれば多少不快に感じるだけのところが、痛みを感じてしまう、というような症状です。
アロディニアの起こるしくみはまだ全貌が解明されたわけではありませんが、痛みの信号を抑える機能に異常が生じると、刺激に対して痛みを感じ始める強さ(閾値(いきち))が下がり、アロディニアが起きてしまうとされています(図1)。

図1.アロディニアのイメージ
片頭痛の有病率

片頭痛とアロディニア

冒頭でも述べましたが、アロディニアは片頭痛の患者さんに多くみられます。海外の研究によると、片頭痛の患者さんのうち約40〜70%の人がアロディニアを経験するといわれています1)。アロディニアは一般的に頭痛発作中に起こりますが(図2)、一部の患者さんでは、頭痛発作の起こっていない期間にアロディニアが起こることもあります。一方で痛みを強く感じない方では、アロディニアが起きているにもかかわらず、医師が詳しく聴き取ってはじめてアロディニアであるとわかる例も少なくありません。

図2.片頭痛に伴うアロディニアの起こる一般的な時期(イメージ)
片頭痛とアロディニア

なお、アロディニアは片頭痛に限らず帯状疱疹や糖尿病性神経障害などさまざまな疾患に関連して起こりますが、ここでは片頭痛に関連するアロディニアについて紹介します。

アロディニアの症状の例

アロディニアによる痛みは「ビリビリ」と持続することが特徴の一つで、頭だけではなく、首から下の体幹部分や、腕・足に出現することもあります。片頭痛患者さんにもし以下のような症状があれば、アロディニアが疑われます。

  • 服の衣擦れがビリビリと感じる
  • 髪をとかすときに「くし」が頭皮に当たると、その部分がビリビリと感じる
  • 髪を束ねてポニーテールにすると、引っ張られる部分がビリビリと感じる
  • メガネのツル・鼻当てや、マスクを耳にかけるひもの当たる箇所に不快感がある
  • ネックレスや指輪などのアクセサリーの当たる箇所に不快感がある

また、アロディニアでは以下のように、触覚刺激だけではなく温度変化でも痛みが起きることがあります。

  • 普通であれば温かいくらいの湯呑みを持つと痛みを感じる
  • 寒いところに移動したときに痛みを感じる

なお、アロディニアの診断には専門的な検査が必要ですので、このような症状が気になる方は受診をご検討ください。

アロディニアと他の痛みとの違い

アロディニアと似た痛みに「痛覚過敏」と「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」がありますので、簡単に紹介します。

痛覚過敏

ここまで紹介したように、「アロディニア」は痛みの閾値が下がり、普段は痛みとして感じない弱い刺激でも痛みを感じてしまう症状です。対して「痛覚過敏」は、閾値は変わらないものの、同じ刺激に応答する痛みの強度が増してしまう、普段よりも強く痛みを感じる症状です(図3)。

図3.アロディニアと痛覚過敏の違い(イメージ)

三叉神経痛

「三叉神経痛」は症状ではなく、疾患名を指す言葉です2)。アロディニアと比べると、痛みの持続時間が数分の1秒〜2分間程度と比較的短く、顔の特定の領域(三叉神経が分布する領域)に出現することが特徴です( あたま・かお・くびの神経痛 で詳しく紹介しています)。歯を磨いたり、ご飯を食べたり、顔を触ったりという刺激に誘発され、ビリッとした電気が走るような痛みを感じることがあります。

片頭痛に関連するアロディニアへの対処方法

まずアロディニアと思われる症状がみられる方は、かかりつけ医にその旨を伝え、場合によっては頭痛専門医の受診をご検討ください。
片頭痛に関連したアロディニアに対処するには、片頭痛の治療を適切に行うことが大切です。アロディニアを抑えるには、頭痛の発作がはじまってから早いタイミングで片頭痛治療薬の服薬が重要です。アロディニアが起こってからの服薬では治療薬の効果が十分に得られない可能性もありますので、すでに医療機関で頭痛の薬を処方されている方は、説明を受けたタイミングで服薬できているか、今一度確認しましょう(図4)3)

図4.鎮痛薬やトリプタン系製剤の服薬タイミング(イメージ)
鎮痛薬やトリプタン系製剤の服薬タイミング

アロディニアが起こったことのある人は、片頭痛が慢性化しやすいともいわれています。もしアロディニアと思われる症状がみられるけれども医療機関をまだ受診していない場合は、ぜひ早めの受診をご検討ください。

<参考>
  1. 1)Mínguez-Olaondo A, et al : Cutaneous Allodynia in Migraine: A Narrative Review. Front Neurol 2021; 12: 831035.
  2. 2)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版, 医学書院, 2018.
  3. 3)Burstein R, et al : Defeating migraine pain with triptans: a race against the development of cutaneous allodynia. Ann Neurol 2004; 55(1): 19-26.