総監修:
社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 (脳神経内科部長・頭痛センター長)/ 富永クリニック 院長
竹島 多賀夫先生

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)

2021年9月作成

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:Trigeminal autonomic cephalalgias)とは

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:タックス)は、目の奥や目の周りが強烈に痛む「顔面痛」と涙や鼻水などの「自律神経症状」が同時に起こることを特徴とした頭痛の総称です。
頭痛の分類では、片頭痛や緊張型頭痛と同じ「頭痛そのものが病気」である「一次性頭痛」に分類されています。TACsに分類される頭痛は、短時間の発作で片側にだけ現れることが多いとされています。主に顔面や頭部の感覚をつかさどる三叉神経が活発になり、その過剰な興奮により副交感神経系が活性化されることによって、鼻水や鼻づまり、眼球結膜の充血(赤くなる)、涙が出る、まぶたが腫れる・下がる、瞳孔が縮む、おでこや顔から汗が出るといった自律神経症状があらわれると考えられています。

群発頭痛

TACsに含まれる頭痛

TACsには、「群発頭痛」「発作性片側頭痛」「短時間持続性片側神経痛様頭痛発作」「持続性片側頭痛」の4つの頭痛があります。

群発頭痛

群発頭痛は、20~40代の男性に多い頭痛ですが、最近は女性にも増えてきたとされています。一度発症すると、1~2ヶ月にわたりほとんど毎日起こります。この頭痛発作が起こっている期間を群発期と呼び、群発期と群発期の間の発作が起こらない期間(寛解期という)は数ヶ月から数年続きます。
群発期ではほぼ同じ時間帯に自律神経症状を伴う頭痛が起こり、目の奥や頭の片側が15分~180分間強烈に痛みます。1) 目の奥がえぐられるような痛みと表現したり、じっとしていられず、転げまわる人もいるほどです。
また、アルコールを飲むと必ずといっていいほど頭痛発作が起こります。アルコールなどの誘因を避けるようにしましょう。

発作性片側頭痛

目の奥、または頭の片側が激しく痛む自律神経症状を伴う頭痛が起こります。痛みや症状は群発頭痛と似ていますが、発作の持続時間は2~30分間と群発頭痛よりも短く、また1日に数回以上発作が起こります。1) 男性よりも女性に多く認められるところも群発頭痛とは異なります。

短時間持続性片側神経痛様頭痛発作

中等度~重度の頭痛発作が数秒~数分間、1日に1回以上起こります。頭痛は頭の片側に起こり、痛む方の目から涙が出たり、充血を伴います。頭痛に流涙と充血の両方を伴うSUNCT(サンクト)と、どちらか1つを伴うSUNA(スナ)に分類されます。
目の奥や側頭部あたりが痛み、その痛みには単発性の刺痛(刺すようにズキっとする)・多発性の刺痛(刺すようにズキズキズキズキする)・鋸歯状(ずっと痛い状態に刺すような痛みが加わる)の3つのパターンがあります。鋸歯状パターンでは、10分間持続するように発作が長くなることがあります。
刺すような痛みであり、三叉神経痛と似た症状ですが、流涙や充血などの自律神経症状を伴うことが特徴です。SUNCTやSUNAでもひげ剃りや歯みがきなどの刺激によって頭痛が誘発されることがあります。

※ 
  • SUNCT:結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作
  • SUNA:頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作

持続性片側頭痛

頭の片側に激しい痛みが生じ、痛む方の目の充血や流涙、鼻づまり・鼻水など症状がみられます。「持続性」と付いているように頭痛の持続時間が長く、1日中続く痛みが3ヶ月を超えてあります。
光をまぶしく感じる「光過敏」や、音を不快に感じる「音過敏」など片頭痛でみられる症状が、持続性片側頭痛でもみられることがあります。

群発頭痛と発作性片側頭痛は症状など似ているところがありますが、治療法が大きく異なります。また、SUNCTやSUNAは、三叉神経痛と似た症状を有しますが、頭痛の分類が異なり、治療法も異なります。TACsに分類される頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛よりも持続時間が短いものが多く、受診時には頭痛が収まっていることが多いと思いますので、ご自身の頭痛を把握し、正しく医師に伝えるために 頭痛ダイアリー を活用し、頭痛を記録しましょう。

TACsは何科で診てもらえるの?

TACsでは歯の痛みや顔面の痛みで歯科や口腔外科を受診される方がいらっしゃいます。これまでご紹介した症状に思い当たる頭痛がある場合、歯を治療しても治らない頭痛がある場合は、脳神経内科・脳神経外科など頭痛を診てもらえる医療機関を受診してください。また、激しい痛みがあるけれど自律神経症状がみられない場合、頭痛が長く続く場合は、他の病気による頭痛も考えられますので、すぐに医療機関を受診してください。

<参考>
  1. 1)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.28-35.