その頭痛は片頭痛?他の疾患による頭痛?
2023年5月作成
頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛のように繰り返し起こる慢性頭痛(一次性頭痛)や、他の疾患が原因となり起こる頭痛(二次性頭痛)、その中にはくも膜下出血や髄膜炎のようにすぐに受診し対処しなければならない頭痛もあり、実にさまざまなタイプがあります。
命に関わるような危険な頭痛は、
その他の頭痛(注意すべき頭痛)
でご紹介していますので、ここでは片頭痛との見極めが難しい頭痛の症状があらわれる疾患をいくつかご紹介します。
副鼻腔炎で頭痛が起こる?
鼻の疾患「副鼻腔炎」でも頭痛の症状があらわれることがあります。
副鼻腔炎は、以前は「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれていました。頬や両目の間、おでこの下の骨の中に粘膜で覆われた空洞(副鼻腔)があり、何らかの原因でそこが炎症を起こしている状態をいいます。風邪などのウイルスや細菌が鼻腔に感染することで炎症が起き、副鼻腔まで炎症が広がることで副鼻腔炎を発症します。
副鼻腔炎では鼻づまり、ドロドロとしてにおいのする鼻水(鼻汁)、頬や鼻の周囲、おでこの痛みなどの症状1)がみられます。副鼻腔炎で痛む場所は、炎症が起こっている場所によって異なりますので、頭痛や顔面痛を感じることがあります。
片頭痛や緊張型頭痛と頭の痛む場所が似ており、また片頭痛でもくしゃみや鼻づまり、鼻水といった鼻部の自律神経の症状を伴うことがあるため2)、片頭痛と誤解してしまう可能性があります。
副鼻腔炎による頭痛(急性副鼻腔炎による頭痛)では、目の奥やおでこあたりの痛みを感じることがあるので、医療機関を受診する際には、医師に「頭の痛む場所」や、鼻づまりなどの「症状」、頭痛が起こり始めた「時期」などを伝えるようにしてください。
また、急性副鼻腔炎を放置していると長引いて慢性副鼻腔炎になることもありますので、早めに受診するようにしましょう。
副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの鼻の疾患によって起こる頭痛や、頭痛に伴い鼻症状が出てくる場合など、鼻と頭痛の関係について、こちらで詳しくご紹介しています。
鼻と頭痛
歯やあごの疾患による頭痛
歯や顎関節の痛みが頭痛に影響を及ぼすことがあります。特に顎関節症は20〜40代に多く、男性より女性の方が1.5〜2倍多い3)といわれています。片頭痛も同じように20〜40代の女性に多いことから、顎関節症と片頭痛を併発している方も少なくないと考えられます。顎関節症の代表的な症状は、食事や会話などで「あごを動かすと痛い」、「あごを動かすと音がする」、「口が開かない」です。
歯や顎関節の痛みは頭だけでなく顔の痛みと感じることがあります。顔面への痛みは他の病気によっても生じることがあるため、何による痛みかを把握して治療することが大切です。
片頭痛がある方で歯科を受診される場合は、歯科医師に片頭痛があることを伝えてください。
歯やあごと関連する頭痛・顔面神経痛
月経前症候群(PMS)や月経に関連する頭痛
女性は月経前に3~10日間続く精神的症状または身体的症状があらわれることがあり、これを月経前症候群(PMS)といいます。精神的症状では、イライラ、眠気、不安、落ち込み、集中力の低下など、身体的症状では、腹痛、胸の張り、腰痛、頭痛、むくみなどがみられます4)。症状や程度には個人差がありますが、月経前に症状があらわれ、月経開始後に症状が和らぐのが特徴です4)。
片頭痛は20~40代の女性に多く、女性ホルモンと深く関係している疾患です。片頭痛をもつ女性の約半数は月経前や月経中に頭痛が起こることを自覚しており、この時期に起こる頭痛は痛みが強かったり持続時間が長いなど症状が重く、治療の効果があらわれにくい傾向があります5)。
PMSと同じ頃に症状があらわれることや、女性であること、年齢層から片頭痛の症状がPMSの症状ととらえられてしまうこともあります。
また、月経中に頭痛が起こると「月経痛(生理痛)」だと思い、我慢している女性も多くいらっしゃいます。
月経に関連して起こる頭痛が片頭痛なのかどうかを見極めて、きちんと対処することが大切です。
また、月経前症候群の治療では、低用量経口避妊薬(OC,低用量ピル)が使用されることがあります4)。前兆のある片頭痛の方にはエストロゲンを含む経口避妊薬は禁忌(使用禁止)とされています。
頭痛の症状が辛い、頻繁に頭痛が起こるなど頭痛に悩んでいる方は、頭痛診療を行う医療機関も受診することをお勧めします。
片頭痛を引き起こす女性特有の原因、女性との関係については、こちらで詳しくご紹介しています。
片頭痛と女性との関係
まとめ
今まで片頭痛に悩まされていた方は、他の疾患により頭痛が悪化したり、慢性化する場合もあります。また、原因となる疾患を治療することで、あなたを悩ませていた頭痛の解消も期待できます。
いつもと異なる頭痛や、今まで頭痛がなかったのに急に頭痛が起こるようになったなど気になる頭痛を感じた場合は、医療機関を受診し医師に相談してください。
すでに片頭痛で通院されている方は、他の診療科を受診する際には、 頭痛ダイアリー を持参し、片頭痛で通院していることを医師に伝えてください。
- <参考>
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- 1)日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:鼻の病気(https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=21)(2023年5月閲覧)
- 2)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.148-159.
- 3)日本顎関節学会 編 : 顎関節症治療の指針2020,p.37. (https://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2020.pdf) (2023年5月閲覧)
- 4)日本産科婦人科学会:月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)(https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13)(2023年5月閲覧)
- 5)「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会:頭痛の診療ガイドライン2021, 医学書院, 2021,p.191-193.