総監修:
社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 (脳神経内科部長・頭痛センター長)
竹島 多賀夫先生

鼻と頭痛

監修:
近畿大学病院 遺伝子診療部 副部長・准教授(頭痛専門医・指導医)
西郷 和真 先生

2021年4月作成

鼻の病気が頭痛を起こす?

みなさんの鼻の穴の奥には、鼻腔(びくう)という空間があり、そのまわりには副鼻腔(ふくびくう)という空間が存在していて、鼻腔とつながっています。また、この副鼻腔は、前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という空間に分けられます(図1)。

図1.副鼻腔の構造
副鼻腔の構造

これらの鼻の奥の空間は、頭部や顔面の感覚に影響を与える神経(三叉神経)の近くに存在しているため、空間に膿(うみ)が溜まったり腫れたりすると、周囲の三叉神経を刺激して頭痛を引き起こすことがあると考えられています。
頭痛を引き起こすことがよくある鼻の病気としては、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)が知られています。

副鼻腔炎による頭痛

副鼻腔炎とは、その名前の通り副鼻腔内の粘膜が炎症により腫れることが原因で起きる病気です。頻度はそれほど多くないものの、副鼻腔炎が頭痛の原因となることがあります。1)
副鼻腔炎が頭痛を引き起こすメカニズムはまだ解明されていませんが、副鼻腔の炎症が三叉神経の近くまで広がり、三叉神経が刺激されることが原因の1つだと考えられています。
三叉神経は、名前のように大きく3つの神経(眼神経、上顎神経、下顎神経(かがくしんけい))から構成されており、おでこから顔全体に広がる神経です(図2)。そのため、副鼻腔炎による頭痛では、三叉神経の分岐点、上顎神経まで炎症が広がり眼の奥やおでこの辺りが痛むことが多いです。このときの痛みの程度は、人それぞれですが、雷鳴頭痛(らいめいずつう)と呼ばれるいきなり雷が落ちたように感じる強い頭痛が起きることもあります。

図2.三叉神経(イメージ)
三叉神経

もともと頭痛持ちではない方で、鼻づまりの後に頭痛が起こり日常生活に支障をきたす場合や、頭痛が長引く場合は、副鼻腔炎による頭痛の可能性もありますので、早めに耳鼻咽喉科や内科を受診し、できればCTやMRIで副鼻腔炎の有無を診てもらうとよいでしょう。
なお、副鼻腔炎の症状についてより詳しく知りたい方は、 その頭痛は片頭痛?他の疾患による頭痛? をご覧ください。

アレルギー性鼻炎(花粉症など)による頭痛

アレルギー性鼻炎の悪化による鼻づまりも、副鼻腔炎と同じように頭痛を引き起こすことがあります。鼻炎の症状そのものが頭痛を引き起こすのではなく、鼻がつまって口呼吸になったり、息苦しくて眠りにくく睡眠不足になったり、普段とは違う状況に置かれることによって生じる精神的ストレスが頭痛の原因となる場合もあります。

鼻の病気による頭痛の治療法

鼻づまりや頭痛の程度が軽い場合は、市販の鼻炎薬や頭痛薬を服用されている方もいるでしょう。鼻づまりは細菌やウイルスによる感染や、アレルギーなどさまざまな原因で起こり、何によって起こっているのかによって治療法が異なるため、市販薬で効果が感じられない場合や症状が長引く場合は、できるだけ早めに耳鼻咽喉科や内科を受診しましょう。

頭痛に伴って起こる鼻の症状

鼻の病気によって頭痛が起こることをご紹介しましたが、頭痛に伴い鼻水などの鼻症状が出てくる場合もあります。この場合は頭痛を治療することで鼻の症状も抑えることができます。

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)と片頭痛による自律神経症状

鼻症状を伴う代表的な頭痛として、 群発頭痛 があります。この群発頭痛は、三叉神経・自律神経性頭痛〔Trigeminal autonomic cephalalgias:TACs(タックス)〕と呼ばれる頭痛のグループに分類されています。
TACsは「顔面の強烈な痛み」と涙や鼻水などの「自律神経症状」が同時に起こるという特徴をもつ頭痛であり、発作が起こるとじっとしていられないほどの痛みを感じます。三叉神経が活発になり、その興奮により副交感神経系が活性化されることによって、鼻水や鼻づまりのほか、結膜の充血、涙が出る、まぶたが腫れる・下がる、瞳孔が縮む、おでこや顔から汗が出る、といった自律神経症状があらわれると考えられています。また、TACsの症状は頭の片側にだけ出現することが多く、眼の奥が強烈に痛む(顔面痛)という特徴もあります。2)

なお、 片頭痛 でも、同じように鼻水や鼻づまりなどの自律神経症状が出現することがありますが、TACsと比べると程度はかなり軽い傾向があります。

片頭痛によるにおい過敏

片頭痛患者さんは光や音に過敏になる方が多いことがよく知られていますが、においに過敏になる方も多いです。また、すべての方に該当するわけではありませんが、においがきっかけとなり片頭痛を引き起こすこともあります。においが頭痛に影響を与えることについて、においの刺激が嗅覚の伝導路を通り、脳の中の扁桃体に運ばれて視床下部に到達して処理される(においを感じる)ことと、片頭痛発作の際に視床下部が活性化していること3)に関係があると考えられています。

何科を受診すればよい?

基本的には、鼻の症状が先に出てきてから頭痛が起きた場合には耳鼻咽喉科を、鼻の症状よりも頭痛が先に起きた場合や、鼻の症状のほかに、前述した結膜充血などの自律神経症状も伴う場合は、脳神経内科や頭痛外来などの頭痛専門医を受診するのがよいでしょう。
なお、それほど頻度は高くありませんが、鼻の病気によって起こる頭痛と、片頭痛やTACsなどの 一次性頭痛 が同時に起こる場合もありますので、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の治療をしても頭痛が治らない場合は、まずは鼻を診てもらっている先生に早めに相談しましょう。

<参考>
  1. 1)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.154-155.
  2. 2)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.28-35.
  3. 3)Schulte LH, et al : The migraine generator revisited: continuous scanning of the migraine cycle over 30 days and three spontaneous attacks. Brain 2016; 139: 1987-1993.