総監修:
社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 (脳神経内科部長・頭痛センター長)
竹島 多賀夫先生

眼と頭痛

監修:
近畿大学病院 遺伝子診療部 副部長・准教授(頭痛専門医・指導医)
西郷 和真 先生

2021年5月作成

眼と頭痛の関係

スマートフォンやパソコンの使いすぎによる頭痛

度の合わないメガネをかけたときや、スマートフォンやパソコンの使いすぎで眼が疲れているときに頭痛を経験されたことがある方も多いと思います。スマートフォンなどのディスプレイは強い光を発していますが、この「強い光」が片頭痛を引き起こす・悪化する要因の1つになることがあります。また、その光にはブルーライト(青色光)が含まれており、ブルーライトが頭痛に影響を及ぼしているともいわれています。
片頭痛や群発頭痛では、頭痛発作時に眼の奥が痛む場合もあります。眼と頭痛にはどのような関連があるのか、解説します。

ブルーライトと頭痛

最近、紫外線やブルーライトなど光の波長・強さの違いにより、頭痛に影響を与えるものがあるといわれています。光によって睡眠不足となり、頭痛が引き起こされているとも考えられています。
人間には1日周期で身体のリズムやホルモンなどを調節するための体内時計:サーカディアンリズム(概日リズム、がいじつリズム)が備わっています。夜に眠たくなり、朝に目が覚めるのはこの体内時計のおかげです。
このしくみには脳内の松果体(しょうかたい)で分泌されるメラトニンというホルモンがかかわっています。メラトニンは眠気を誘うなどの役割をもち、夜間に多く分泌され昼間は少なくなることが知られています。1)このように時間によって分泌量が変わるのは、眼で感じた日光に含まれるブルーライト等が、メラトニンの分泌を抑えるからだと考えられています。
このブルーライトは、スマートフォンやパソコンなどのディスプレイから出る光や、蛍光灯・LED照明などのさまざまな人工光にも含まれています。昨今のスマートフォンの普及によって寝る直前までブルーライトを浴び続ける方が急増したことで、夜でもメラトニン分泌が抑制され睡眠の質が下がってしまっている方が増えていると考えられています。もし心当たりがある方は、質の良い眠りのために以下のような対策を実行してみましょう。

  • 寝る数十分〜1時間程度前から、スマートフォンやテレビなどのディスプレイを見ないようにする。
  • 間接照明などを利用して、夜間は強い光を避ける。
  • 部屋の照明を寒色系ではなく暖色系にする、または色を変えられる照明であれば夜間のみ暖色系に変える。

眼の疲れ(眼精疲労)やドライアイによる頭痛

眼の疲れ(眼精疲労)やドライアイが頭痛の原因となることがあります。眼の異常が肩こりや疲労を引き起こし、その心身のストレスから片頭痛や緊張型頭痛になると考えられています。
眼精疲労やドライアイの一番の原因はパソコンやスマートフォン等のデジタルデバイスの使いすぎです。デジタルデバイスによって眼の疲れ・痛み、肩こりや頭痛、こころなど全身に及ぶ不調が起こる病気をVDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群といいます。IT眼症(がんしょう)とも呼ばれています。
VDT症候群の予防には、1時間作業したら10〜15分程度の休憩をとる、眼とディスプレイの間の距離を40 cm以上とる、などの対策が有効であるといわれています。2、3)

頭痛に伴って起こる眼の症状

片頭痛や群発頭痛では、頭痛に伴い眼の症状があらわれることがあります。

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)と片頭痛による自律神経症状

眼の症状を伴う代表的な頭痛として、 群発頭痛 があります。この群発頭痛は、三叉神経・自律神経性頭痛〔trigeminal autonomic cephalalgias:TACs(タックス)〕と呼ばれる頭痛のグループに分類されています。
TACsの症状は片側にだけ出現することが多く、眼の奥が強烈に痛む「顔面痛」と涙や鼻水などの「自律神経症状」が同時に起こるという特徴があります。三叉神経が活発になり、その興奮により副交感神経系が活性化されることによって、結膜の充血、涙が出る、まぶたが腫れる・下がる、瞳孔が縮む、おでこや顔から汗が出る、鼻水や鼻づまりといった自律神経症状があらわれると考えられています。4)
なお、片頭痛でも眼の奥の痛みや、結膜の充血、涙が出るなどの自律神経症状が出現することがあります。
どちらの頭痛にも三叉神経(図)が深くかかわっています。三叉神経は眼の周辺の知覚を担当している神経でもあるため、それが眼の痛みと関係しているのではないかと考えられています。

図.三叉神経(イメージ)
三叉神経

片頭痛による光過敏と閃輝暗点

片頭痛では、光過敏と閃輝暗点(せんきあんてん)という眼に関連する症状があらわれる場合があることが知られています。

  1. 1)光過敏
    片頭痛発作時、ふだんは気にならない室内の照明などの光がまぶしく感じたり、不快に感じることがあります。これを光過敏と呼びます。 
    光過敏には片頭痛の発症とも深く関わるカルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide:CGRP) という物質が関係していると考えられています。5)
    なお、片頭痛では、光以外にも音やにおいに過敏になる方もいらっしゃいます。
  2. 2)閃輝暗点
    閃輝暗点は片頭痛の代表的な前兆の1つです。この閃輝暗点をはじめとする片頭痛の視覚的前兆は、皮質拡延性抑制 (ひしつかつえんせいよくせい、cortical spreading depression:CSD)という、脳内の電気信号系の異常が原因で起こると考えられています。6)
    閃輝暗点の症状は 片頭痛 の項目をご覧ください。

眼の病気による頭痛

前述した閃輝暗点と似た症状が出る病気として黒内障(一過性黒内障)があります。黒内障は眼とつながっている血管が血栓で詰まり、一時的に片側の眼が見えなくなる病気です。黒内障になる方は、動脈硬化が進んでいる可能性があるため脳梗塞に注意が必要です。特に中年以降になってはじめてこのような症状が出た場合には、まずは早めに眼科やかかりつけ医に相談しましょう。
その他、急性閉塞隅角緑内障や、虹彩炎(こうさいえん)、ぶどう膜炎などの炎症性疾患でも頭痛を伴う場合があることが知られています。7)また、動眼神経麻痺、外転神経麻痺、加齢黄斑変性(黄斑変性症)などの病気では、ものが二重に見えたり、ゆがんで見えたりすることがストレスになり頭痛を引き起こす可能性があります。

何科に相談すればよい?

頭痛以外の症状が眼の症状(痛みや充血など)だけであれば眼科を、眼の症状の他に、前述した発汗や鼻水などの自律神経症状も伴う場合は、脳神経内科や頭痛専門医を受診するのがよいでしょう。
また、一般的に片頭痛などの頭痛は加齢とともに軽快していきますが、急性閉塞隅角緑内障や加齢黄斑変性などの眼の病気は加齢とともにかかりやすくなりますので、40歳を過ぎてはじめて眼に強い痛みを感じた場合は、まずは検診も兼ねて眼科を受診することをおすすめします。

<参考>
  1. 1)メラトニン:e-ヘルスネット(厚生労働省)
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html
  2. 2)厚生労働省:VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン, 平成 14年4月5日
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000184703.pdf
  3. 3)公益社団法人 日本眼科医会:パソコンと目 5.目にやさしいパソコンとの付き合いかた
    https://www.gankaikai.or.jp/health/42/05.html
  4. 4)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.28-35.
  5. 5)Mason BN, et al : Induction of migraine-like photophobic behavior in mice by both peripheral and central CGRP mechanisms.J Neurosci 2017;37:204-216.
  6. 6)Joshua Lai, Esma Dilli : Migraine Aura: Updates in Pathophysiology and Management. Current Neurology and Neuroscience Reports 2020;20:17
  7. 7)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.152-153.