総監修:
社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 (脳神経内科部長・頭痛センター長)
竹島 多賀夫先生

歯やあごと関連する頭痛・顔面神経痛

監修:
近畿大学病院 遺伝子診療部 副部長・准教授(頭痛専門医・指導医)
西郷 和真 先生

2021年12月作成

頭痛とは文字通り“頭が痛い”ことであり、歯やあごの痛みとは別のものとして捉えていらっしゃる方も多いと思います。ただ、ときにこれらは密接に関連しあって痛みが起きている場合があります。例えば、虫歯になったときに頭に響くほどの痛みを経験されたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、ここでは歯やあご(顎関節)と頭痛の関係、痛みの特徴について解説します。

歯やあご(顎関節)と頭痛の関係

歯やあご(顎関節)と頭痛の関係

人には顔面や頭部の感覚をつかさどる三叉神経があります。三叉神経は、鼻や口の中を含む顔の感覚(痛い、熱い/冷たい、何かが触れたなど)を脳に伝えますが、頭痛における痛み刺激の通り道のような役割も担っており、歯や顎関節で生じる痛みや頭痛などに深くかかわっていることが知られています。

三叉神経は3つの枝に分かれていて、その枝と先の神経により支配領域が分かれています(図)。分岐点の上から3つめの枝(第三枝領域)が口からあごの周辺に分布していますので、虫歯や歯科治療、顎関節症(がくかんせつしょう)などでも刺激が近くにある三叉神経にも伝わり頭痛が引き起こされると考えられています。

図.三叉神経(イメージ)
三叉神経

顎関節症は20〜40代に多く、女性の方が男性より1.5〜2倍なりやすい1)といわれています。片頭痛も同じように20〜40代の女性に多い傾向があります(性別や年齢と頭痛の関係)。そのため、顎関節症と片頭痛を併発している方も少なくないと考えられます。顎関節症と片頭痛を併発している方では、顎関節の痛みが片頭痛を引き起こしたり、逆に片頭痛が顎関節の痛みを引き起こすことがあります。

歯やあご(顎関節)と関連する顔の痛み

歯や顎関節の障害と頭痛との関係についてご説明してきましたが、それらは頭部だけでなく顔面にも痛みを生じることがあります2)。また、顔面への痛みは歯や顎関節の障害だけでなく、一次性頭痛や他の病気によっても生じることがあります。

目の奥や目の周辺が強烈に痛む「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」

群発頭痛は目の奥の痛みを伴う頭痛として知られていますが、痛みが非常に強いために目の周辺や歯の周辺にまで痛みが広がり顔面痛を引き起こすことがあります3)。この群発頭痛は、三叉神経・自律神経性頭痛〔Trigeminal autonomic cephalalgias:TACs(タックス)〕と呼ばれる頭痛のグループに分類されています。
TACsの症状は片側にだけ出現することが多く、目の奥や目の周辺の痛みのほかに、涙や鼻水などの「自律神経症状」が同時に起こるという特徴があります。三叉神経が活発になり、その興奮により副交感神経系が活性化されることによって、結膜の充血、涙が出る、まぶたが腫れる・下がる、瞳孔が縮む、おでこや顔から汗が出る、鼻水や鼻づまりといった自律神経症状があらわれると考えられています4)

顔がビリビリっと痛む「三叉神経痛」

三叉神経に近くの脳血管が触れて圧迫することで、三叉神経が分布する領域に沿ってビリビリっとした激しい痛みが出現するものを“三叉神経痛”といいます。その痛みは顔の表面を刺すような短い痛み、あるいはビリッと電気が走るような痛みと表現され、洗顔やひげ剃り、歯みがき、咀嚼・会話などで誘発されることがあります。
発作の回数は非常に多く、1日に100~200回起こることもあり、1回あたりの持続時間は長くても2分程度と短いものです3,5)
また、三叉神経痛は、腫瘍や多発性硬化症などの他の疾患によっても起こることがあります。

顔が焼けるように痛む「有痛性三叉神経ニューロパチー」

過去に経験した病気や外傷などにより三叉神経が傷つくことで、三叉神経の支配領域に生じる頭部および顔面痛を“有痛性三叉神経ニューロパチー”といいます6)。帯状疱疹、抜歯やインプラント手術などの歯科治療などをきっかけに発症することがあります。いったん神経が傷ついてしまうと、その後は肌を触るなどの弱い刺激でも痛みが出るようになってしまうことがあり、アロディニア(異痛症)などの痛覚過敏を伴うことがあります。
焼けつくような、絞られるような、またはピンや針で突き刺すような痛みと表現され、三叉神経痛よりも長く続きます。

顔の周辺の痛みを伴うそのほかの病気

ほかにも顔の周辺の痛みを伴う病気として、のどやあご、耳のあたりが痛む舌咽神経痛や、目の周辺が痛むトロサ・ハント症候群などが知られています。

どの診療科を受診すれば良い?

三叉神経痛では歯みがきや咀嚼・会話などの口の動きで歯や歯肉(歯ぐき)に強い痛みが生じるので、歯科を受診される方もいらっしゃいます。ここでご紹介しました症状に当てはまる場合や、歯科治療後にも顔面や頭部の痛みが続く場合は、脳神経内科やペインクリニックなど頭痛を専門とする診療科を受診するようにしましょう。
また、有痛性三叉神経ニューロパチーのように神経が障害されることによる痛みは数年以上続くこともあります。歯・あご(顎関節)の痛み、顔面痛などは原因を自己判断するのは難しいため、まずはかかりつけ医に気になる症状を相談するのがよいでしょう。

<参考>
  1. 1)日本顎関節学会 監修 : 顎関節症治療の指針2020,p.37
    (http://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2020.pdf)
  2. 2)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.155-156.
  3. 3)Benoliel R : Trigeminal autonomic cephalgias. Br J Pain 2012; 6(3):106–123.
  4. 4)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.28-35.
  5. 5)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.167-171.
  6. 6)日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,医学書院,2018,p.171-173.