子どもの頭痛
- 監修:
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一般財団法人筑波麓仁会 筑波学園病院 小児科/
医療法人財団 健貢会 東京クリニック 小児・思春期頭痛外来藤田 光江 先生
2021年3月作成
子どもの頭痛は決して珍しいものではありません。幼児期から頭痛を訴える子どももいますが、必ずしも「頭が痛い」と表現するとは限りません。子どもの頭痛について、頭痛のタイプと特徴、保護者や学校関係者の方に知っておいていただきたいポイントを解説します。
子どもの頭痛のタイプ
子どもに起こりやすい頭痛にはいくつかのタイプがあり、それぞれ対応が異なります。頭痛と一緒に起こる症状や行動などから、どのタイプの頭痛なのかある程度タイプを絞ることができます。以下に代表的な子どもの頭痛の特徴をあげます。頭痛が辛そうにみえる場合や繰り返し何度も起こる場合は自己判断せず、かかりつけ医に相談してください。
片頭痛が疑われる特徴
片頭痛 と聞くと大人の病気と思われる方もいらっしゃいますが、子どもでも決して珍しい病気ではありません。以下のような特徴を伴うことが多いです。
- 頻度・症状
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- 月に数回の頻度で頭痛が起こる
- 平日も休日も関係なく頭痛が起こる
- 顔が青くなる
- 頭痛の程度は強いが、1日以内に治ることが多い
- 頭痛中に嘔吐する
- 頭痛の前に目の前がチカチカしたり、見えにくくなったりすることがある
- 台風や梅雨時の低気圧と関連して頭痛が起きる
- 生理(月経)期間に頭痛が悪化する
- 眠ると頭痛が改善することが多い
- 行動・生活
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- 頭痛が起こるとじっと動かなくなる
- まぶしい光や大きな音を避ける(暗い部屋で寝たがる、テレビやゲームの画面を見ていられない、など)
- 頭痛が治まれば、学校へ行ける(授業に戻ることができる)
- その他
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- 家族に片頭痛の方がいる
慢性連日性頭痛が疑われる特徴
慢性連日性頭痛とは毎日のように頭痛が起きる病気です。たまに起こっていた頭痛がある時期から頻繁に起こるようになったり、今まで頭痛の経験がなかったのにある時期から毎日のように起こるようになったりします。慢性連日性頭痛は、 緊張型頭痛 が主体であることが多く、親や先生、友達との関係、いじめや成績などの心理社会的な要因が関わり、たまにあった片頭痛に緊張型頭痛も起こるようになり頭痛が増えたか、何かをきっかけに緊張型頭痛が始まったと考えられます。以下のような特徴を伴うことが多いです。
- 頻度・症状
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- 2〜3日に1回以上の頻度で頭痛が起こり、学校を欠席することが多い
- ある時期から急に頭痛がはじまった/頻度が増えた
- 平日の朝に頭痛が起こることが多く、休日はあまり起こらない
- 頭痛のはじまりと終わりがはっきりしない。だらだらと続く
- 吐き気はないか、あったとしても軽い
- 行動・生活
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- 頭痛中でも活動の制限が少ない(歩いたり、テレビやゲームの画面を見ていられる、など)
- 朝の頭痛が治まっても学校へ行けない
- その他
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- 患者さんには一定の性格特性がみられる(自分を出すのが苦手、人に気を遣う、完璧主義、プライドが高い、など)
二次性頭痛が疑われる特徴
他の病気によって頭痛が起こる 二次性頭痛 は一般的に子どもに起こることは稀だと考えられていますが、頭痛に以下のような特徴を伴う場合は、二次性頭痛が疑われるため一度かかりつけ医に相談してください。
- 日を追うごとにだんだん頭痛の強さが増し、頻度も増えている
- まっすぐ歩けない
- 食欲が低下し体重が減った
- 大笑いや大泣きをしたときに身体から力が抜ける
- 立ちくらみが多い
- 朝に嘔吐することがある
- 頭痛のせいで睡眠中に目が覚めることがよくある
子どもの頭痛の特徴
幼児期〜思春期:1歳前後~11歳頃
この時期は頭痛の中でも片頭痛がいちばん多くみられます。片頭痛の頻度は月3〜4日で、眠ると翌朝に持ち越さないことが多いので、学校欠席はほとんどありません。片頭痛であれば、睡眠不足、強い光、チーズやチョコレートなどの特定の食品などの誘因を避けることが大切です。痛みが強い場合にはかかりつけ医を受診し、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。また、子どもの片頭痛のことは幼稚園・保育園や学校側にもしっかり伝え、片頭痛が起きたときの対応を共有しておきましょう。
もし朝に頭痛を訴え、登園・登校を渋る場合は緊張型頭痛の可能性があります。この場合、スキンシップを多くとる、環境を調整するなどのケアが有効です。
なお、思春期は一般的に11~12歳頃にはじまると考えられていますが、個人差が大きいため、年齢よりもお子さんの成長に合わせて対応することが大切です。
思春期:11、12歳頃~17、18歳
この時期も片頭痛が多くみられます。片頭痛の場合、特徴や対処法は思春期前と大きく変わりませんが、女子の月経関連片頭痛は薬が効きにくく、痛みが数日続くことがあります。
また、小学校高学年から中学生頃を境に慢性連日性頭痛の子どもが増えてきます。この慢性連日性頭痛は、心理社会的要因が関与した頭痛で、思春期という年齢、自分を出すのが苦手な性格特性、学校・家庭などの環境要因が関連しています。もともと片頭痛があった子どもが思春期を迎えてから慢性連日性頭痛に移行することもあります。
慢性連日性頭痛になる年齢やきっかけはさまざまですが、勉強や部活などのプレッシャーが急激に増え、人間関係も複雑になる中学1年生の夏休み明け頃を境に起こりはじめる子どもが多いようです。特に中学受験を経験した子どもにその傾向が強く、ゴールだと思っていた中学入学がまだスタートに過ぎなかったことに気づいてバッテリー切れを起こしたり、入学後のテストで思うような順位をとれず自己評価が急激に下がったりした場合などに起こります。
学校欠席が続く場合、子どもの社会を閉じないために、保健室登校、市町村の適応指導教室・教育支援センター、習い事などの居場所作りや、子どものためのこころの外来への通院も検討するとよいでしょう。子どもの学校欠席が続くこと自体、大きな問題なので、頭痛にとらわれず生活の改善を目標にすることが大切です。もし3日以上続けて学校を欠席した場合は、まずは小児科などのかかりつけ医へ相談しましょう。
保護者やまわりの方へ
慢性連日性頭痛の子どもを見守るときの心構え
平日朝の頭痛は学校欠席に繋がり、欠席が長引くと学業の遅れや高校生では留年などの心配も出てきますので、保護者の方はとても悩まれていることと思います。ただ、この頭痛の治療にはこころのケアが必要で治療に時間がかかることが多いため、子どもに寄り添って、頭痛と付き合いながらできることを子どもと一緒に気長に探していく気持ちをもつことが必要です。子どもが自分づくりをし、成長していくことで乗り越えることができると考えられています。
それまでは、仕事から帰宅後に子どもと一緒に散歩に出かける、休日には一緒に遊ぶといった何気ないスキンシップの時間を増やし、学校に行く行かないにかかわらず、子どもを愛しているということを態度で表現し続けることが大切です。
また、子どもには学校に行かない日でも規則正しい生活をさせることもとても大切です。昨今ではオンラインゲームやスマートフォンの使い過ぎで昼夜逆転してしまう子どもが少なくありません。場合によっては夜10時半を過ぎたらWi-Fiルーターの電源を切ってしまうなど、電子メディアへの曝露の制限を積極的に検討してください。
一方、この頭痛では、保護者の過剰な心配や原因探しによって子どもの頭痛が悪化し、保護者はさらに子どもを心配するようになるという「共依存」に陥ってしまうことがあります。特に頭痛ダイアリー1)(小学生では登校カレンダー2))の記入を保護者が代行しているケースによくみられるため、必ず子ども本人に記入させましょう。親離れ・子離れを進めることがこの頭痛の治療に良い影響を与えると考えられています。
学校関係者の方へ
学校関係者の方に向けて、子どもの頭痛への対応をまとめた冊子「知っておきたい 学童・生徒の頭痛の知識」が 日本頭痛協会のホームページ にございます。無料でダウンロードできますので、ぜひ一度ご覧ください。
- <参考>
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- 1)一般社団法人日本頭痛協会ホームページ: 養護教諭と教師向け資料: 小児・思春期頭痛ダイアリー:(https://www.zutsuu-kyoukai.jp/)
- 2)藤田光江:わかってほしい!子ども・思春期の頭痛.南山堂,2019.