気圧変化による頭痛
2026年3月作成
「雨が降ると頭がズキズキする」「台風が近づくと体調が悪い」そんな経験はありませんか?実はこれ、気圧の変化が原因かもしれません。特に、天気の変化とともにあらわれる頭痛は「天気痛」や「気象痛」という名前で呼ばれることもあります。
知っておきたい「気象痛(天気痛)」と「片頭痛」
「気象痛(天気痛)」とは?
気象(天気)の変化は頭痛だけではなく、関節痛、肩こり、めまい、食欲不振などさまざまな不調を引き起こすことが知られています。これらは総称して「気象病」と呼ばれることがあります。なかでも、痛みを伴うものを「気象痛」や「天気痛」と呼ぶことも多いようです。なお、「気象病」や「気象痛(天気痛)」は医学的に正式な病名ではありませんが、実際に多くの患者さんが悩まされており、広く使われる言葉となってきました。
また、頭痛にはさまざまなタイプ・原因がありますが、天気の変化で起こる頭痛は、一次性頭痛と呼ばれる片頭痛や緊張型頭痛が関連していることがあります。本記事では、このなかでも特に気象の影響を受けやすい片頭痛との関連性を中心に解説します。
「頭痛と天気」の関連性
片頭痛には、ストレスや睡眠不足など、発作や悪化を引き起こす誘因(誘発因子・増悪因子)が数多くあります1)。天気の変化もその一つです。ある海外の調査では、片頭痛患者さんの約40%が天気の変化を誘因の一つだと感じていたそうです2)。
特に、日本を含む東アジアでは、他のアジア地域よりも天気の影響を感じている片頭痛患者さんが多いようです。これは、四季の変化や台風・低気圧といった、この地域特有の気候が関係している可能性があります3,4)。
天気の変化はあくまで誘因の一つ
ただし、天気の変化はあくまで誘因の一つに過ぎません。実際、前述の調査でも、片頭痛患者さんは一人あたり平均6.7個もの誘因をもっていたそうです2)。
つまり、天気の変化がそれ単独で片頭痛発作を起こすというより、いくつもの誘因が重なって発作が起きている可能性が高いと考えられます。詳細は後述しますが、特にストレス、空腹、睡眠障害といった代表的な誘因には注意が必要です2,3)。
気圧と頭痛の関連性
気圧で悪化しやすい頭痛「片頭痛」
天気(気圧、温度、湿度、風速など)のなかでも、特に気圧変化と片頭痛の関連性には昔から多くの方が注目してきました。例えば、ある調査では5〜10hPa(ヘクトパスカル)程度のわずかな気圧低下でも、片頭痛が起きやすくなることがわかっています5,6)。また、多くの頭痛患者さんが利用する体調管理アプリのビッグデータ解析により、頭痛(※)には以下の気象条件が関係している可能性があることがわかりました7)。
- 低気圧
- 6時間前よりも大きな気圧低下
- 朝6時の高気圧
- 翌朝6時の低気圧
- 頭痛前後の6日間にわたりずっと気圧が低い
- 頭痛前後の6日間にわたり気圧が低下し続けている
- 高湿度
- 大雨
気圧変化による頭痛はいつ起こる?
前項目で触れたように、台風の接近などで日ごとの気圧差が大きくなると、頭痛が起こりやすくなります。図1は、東京に台風が接近した際のグラフですが、実際に台風発生の前後で大きな気圧変化が見られます。さらに、東京から遠く離れた福岡でも同じような変化が見られました(図2)。このときは、恐らく日本中で多くの患者さんが頭痛に悩まされたのではないでしょうか。
図1 台風接近時の東京の気圧推移(2025年7月)気象庁が公開する過去の気象データより作成
図2 図1と同日における福岡の気圧推移(2025年7月)気象庁が公開する過去の気象データより作成
気圧による頭痛はどんな症状?
もしズキズキと痛む場合や、部屋の電気をまぶしく感じたり、テレビの音をうるさく感じたりする場合は片頭痛の可能性があります。一方、頭が締め付けられるような痛みや、頭を重く感じる痛みの場合は緊張型頭痛の可能性があります。
片頭痛と緊張型頭痛の特徴は、以下で詳しく解説しています。
季節と頭痛の関係については、以下もご覧ください。
低気圧が近づくとなぜ頭痛が起こるのか?〜気圧変化が頭痛を引き起こすメカニズム〜
気圧変化が頭痛を引き起こす理由は、まだ正確にはわかっていません。ここでは可能性が高いと考えられている説を一つ紹介します。
耳の奥にあるセンサーが気圧変化を感知している?
動物(ラット)での研究により、耳の奥(内耳)に気圧変化を感知するセンサーがあり、痛みの発生と関係していることや、気圧変化が脳内の特定部位の神経活動を活性化させることがわかっています8)。人間にも同様のしくみが備わっていると考えられており、気圧変化による刺激が耳から脳を経由して、自律神経の活性化や脳血管の拡張などを引き起こし、頭痛が起きている可能性があります。
気象に関連する頭痛と向き合うための対処法
気圧をはじめとする気象の変化を避けることはできません。しかし、頭痛はさまざまな誘因が重なって起きるため、自分で対処可能な誘因を知り、それを避けるように努め、自律神経を整えることが予防につながります。
自分で対処可能な誘因(誘発因子・増悪因子)の一例1,2)
- 片頭痛の誘因:ストレス、絶食、睡眠障害(睡眠不足、睡眠過多)、香水などのにおい、光、音、アルコール、運動、特定の食品(誘因となる食品は人により異なりますが、チーズや赤ワインなどが有名です)
- 緊張型頭痛の誘因:肥満、喫煙、運動不足(運動は、片頭痛では誘因ともなり得るため注意が必要です)
梅雨の時期や台風シーズンの対策
- 天気予報をチェック:梅雨入り直前から台風シーズン(5〜10月頃)は、天気予報を日常的にチェックしましょう。今後の気圧低下や大雨が予想される場合には、前項で挙げた誘因を避けるなど、予防的に行動することが大切です。
- 規則正しい生活:普段から十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、自律神経を整えるための健康習慣づくりに取り組みましょう(生活面の工夫による予防)。
発作が起きたときの対処法
誘因を避け、規則正しい生活をしていても、起きるときには起きてしまうのが頭痛の辛いところです。もし頭痛が起きてしまったときは、まずは安静にする、頭を冷やす、光や音を避けるなどのセルフケアを行いましょう(薬以外の対処方法)。
また、心身をリラックスさせて自律神経を整えることも大切です。普段から自分に合ったリラックス法を見つけておくとよいでしょう。以下に一例を挙げます。
- 深呼吸:おへそのあたりに手をあて、腹式呼吸を意識しながら、数秒間かけて口から息を吐いていきます。息を吐ききったら、今度は数秒間かけて鼻から大きく息を吸っていきます。これを5〜10回程度繰り返します。
- アロマテラピー:好みの香りはリラックスに役立ちます。ただし、片頭痛の発作中はにおいに過敏になっている場合があるため、不快に感じるときは控えましょう。
治らない頭痛は自己判断せず専門医へ
くり返し頭痛が起きる方や、何か気になることがある場合は、医療機関の受診をご検討ください。特に、頭痛により日常生活に支障が出ている場合は、「たかが頭痛」と考えず、医師に一度診てもらうことをお勧めします。その他、以下に受診の目安などを挙げました。
危険な頭痛に注意
次のような症状がある場合、危険な頭痛の可能性もあるため、できるだけ速やかに医療機関を受診してください。
- 突然起こった激しい頭痛
- 症状がどんどん悪化している、頻度が増えている
- いつもと痛みが違う
- 頭痛以外に以下のような症状がある
- 手足のしびれ・麻痺
- けいれん・意識障害
- ろれつが回らない
- 嘔吐
- 視野が狭くなる
- 38度以上の発熱
注意すべき頭痛については、以下もご覧ください。
専門医への受診と相談
医療機関を受診する場合、まずはかかりつけ医にそのことを伝え、できれば頭痛に詳しい医師や頭痛専門医を受診することをご検討ください。日本頭痛学会のホームページに掲載されている認定頭痛専門医の一覧を参考にできます9)。
これまでに頭痛の画像検査を受けたことがない、もしくは以前に検査を受けてから期間が空いている方であれば、MRIやCTなどの画像検査で、頭蓋内に異常がないかを調べることができます。受診によって正しい診断名や誘因を知ることは、適切なセルフケアにつながります。また、片頭痛と診断がついた場合に片頭痛治療薬の処方や予防について相談することができます。
頭痛の症状を記録してみましょう
いざ受診しようと思っても、どんなときに頭が痛くなったのか、そのときの天気はどうだったか思い出せないものです。頭痛ダイアリーを活用し、症状と天気を一緒に記録してみましょう。
- <参考>
-
- 1)「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会:頭痛の診療ガイドライン2021, 医学書院, 2021,p.104-106.
- 2)Kelman L : The triggers or precipitants of the acute migraine attack. Cephalalgia 2007; 27:394-402.
- 3)Iba C, et al : Migraine triggers in Asian countries: a narrative review. Front Neurol. 2023; 14:1169795.
- 4)滝沢翼, 他 : 片頭痛の誘発因子についての最新の知見. 日本頭痛学会誌. 2024; 51: 110-111.
- 5)Kimoto K, et al : Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Intern Med. 2011; 50:1923-1928.
- 6)Okuma H, et al : Examination of fluctuations in atmospheric pressure related to migraine. SpringerPlus. 2015; 4:790.
- 7)Katsuki M, et al : Investigating the effects of weather on headache occurrence using a smartphone application and artificial intelligence: A retrospective observational cross-sectional study. Headache. 2023; 63:585-600.
- 8)Sato J, et al : Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice. PLoS ONE. 2019; 14:e0211297.
- 9)日本頭痛学会,〈認定頭痛専門医一覧〉(https://www.jhsnet.net/ichiran.html)(2026年1月13日閲覧)
